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東京都荒川区立尾久八幡中学校

『初恋/島崎藤村』に曲をつけよう!

2016/04/6

中学校創作
  • オリジナルソングづくり

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 昨年度よりWindowsタブレットを導入し、今年度からは全教科での積極的な活用を推進している尾久八幡中学校。音楽科での活用について音楽科の安達先生に伺うと、「指揮のテストに向けて、指揮をしている姿を動画で撮り確認してみるという活用をしたことがある」とのこと。今回は、VOCALOID4 Editorを使って音楽創作の授業を実施していただきました。


 

1.歌詞について

 

初恋

 創作授業のテーマとして、安達先生より「島崎藤村の『初恋』にメロディを付けるのはどうか」とご提案をいただきました。この『初恋』は、国語の授業で学習した際、生徒たちは暗唱もしており、とても親しみがあるとのこと。また、「思春期を迎え感受性の豊かな生徒たちにとって良いのではないか」という想いもあったようです。
 歌詞作りから始める場合には、メロディが付くことを想定し言葉のリズムや文字数などに気を付ける必要がありますが、この『初恋』は、少年の初々しい恋心を美しい七五調のリズムで表現しており、このような点においてもメロディ作りに向いていたように思います。

 


 

2.曲作りの基礎を学ぼう

 

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 音楽創作に入る前に、「曲の構成」「メロディ」「リズム」について学習しました。
 「Aメロ、Bメロ、サビ、それぞれの特徴や役割について」、「言葉の区切りを意識したリズムの作り方」、「伴奏に合ったメロディの作り方」、「メロディラインの工夫」など。今まで歌ってきた合唱曲を振り返ってみると、そのような要素がいっぱい含まれています。最初は「難しそう!」と感じていた「曲作り」でしたが、生徒たちは音楽の授業で歌ってきた曲を通して、曲作りの基礎についての理解を深めることができたようです。

 


 

3.メロディを考えよう

 

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 4人1グループで1曲完成を目指して創作に取り組みました。『初恋』は4つの段落から構成されています。1つの段落ごとに担当者を決め、それぞれ8小節、全体で32小節の曲になるようにしました。
 まず、リズムを考えるところからスタート。歌詞の意味を正しく伝えるためには、言葉の区切りがとても重要になってきます。音を伸ばすところ、休符を入れるところなどに注意しながらリズムを考えました。また、同じリズムを反復し印象付けることも効果的ですし、シンコペーションやアウフタクトなど、日頃聴いている音楽に使われているリズムも自然と頭に浮かんでくるようでしたが、それを再現するにはどんな長さの音をどのように組み合わせれば良いのか、分析しなくてはなりません。皆、真剣な面持ちでリズム制作に取り組んでいました。
 次に、メロディ作りではいよいよWindowsタブレットのVOCALOIDを使っての作業です。VOCALOIDはピアノロール画面の上に音を一つ一つ置いていく感覚でメロディを作ります。音一つ一つは線で表され、横に長く引かれた線は音が長く伸びていることになります。また、ピアノロール画面の下方は低い音程で、上へ行くほど音程が高くなります。そのため、視覚的にリズムや音程の変化を理解することができるので、楽譜の苦手な生徒も無理なく感覚的にメロディ制作をすることができたようです。また、画面上に並べた音を再生し、すぐにメロディを聴いて確認することもできます。1フレーズ作る度に友達に聴いてもらい、アイディアを交換しながらメロディ制作に没頭している様子も見られました。

 


 

4.4つのメロディを繋げて1曲完成しよう

 

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 1人8小節のメロディを作った後は、4人のメロディを繋げて1曲の完成となります。これまでは基本的に個人での作業でしたが、生徒たちは自分が担当する段落の役割をよく理解し制作していたようです。最初の段落のAメロは次のBメロへの繋がりを考慮し、そしてサビへ向けて盛り上がるように音程の変化が工夫されていました。また最後の段落はメロディの終り方に気を配っており、1曲としての構成がきちんとまとまっていたように思います。
 4人のメロディを繋げた後は、メンバーで意見を出し合いながら曲全体の調整をしました。中には自ら放課後の時間を使ってブラッシュアップに励むグループもあり、積極的に活動している様子が伺えました。
 VOCALOIDではメロディ作りの操作以外にも、ピアノ伴奏音源のインポートや、4つのメロディを繋げるための操作が必要でしたが、生徒たちは難なくこなしていました。時には、安達先生がパソコンやVOCALOIDの操作を手伝っている場面も見られましたが、音楽創作以外の操作での煩わしさは無いようでした。

 


 

5.発表

 1クラス10グループに分かれて取り組んだ創作授業。最後の締めくくりとして、完成した曲を1グループずつ発表しました。そして生徒一人一人が10グループの曲を審査し、良いと思う3曲に投票するという形式で、各クラス「ベスト3」を決めました。
 中学3年生の3学期は、受験や合格発表という時期でもあり、時には授業に参加できない生徒もいましたが、このメロディ制作では笑顔も見られ、欠席した生徒の分も他のメンバーがフォローしながら楽しそうに制作している姿が印象的でした。メロディ制作を体験したことで、これからの音楽の聴き方にも変化が見られるかもしれません。また、音楽に対する興味も深まったかもしれません。中学校最後の音楽の授業として、良い思い出になったことでしょう。

■ 尾久八幡中学校 音楽創作授業『初恋/島崎藤村』より

・3年1組

・3年2組

・3年3組

・3年4組

 

担当の安達先生の声

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 VOCALOIDは以前から知っていましたが、機械的なものであり「こんなものが出てきてしまった」というマイナスイメージを持っていました。学校の授業で使用することについて不安と心配がありましたが、創作の授業で使ってみると、感覚的にメロディを作ることができ、リズムや音の高い低いが目で見て確認できる。そして、すぐ聴いて耳で確認することもできる。五線紙の上では困難な音楽制作がVOCALOIDを使うと可能になり、学校の音楽の授業でとても有効なツールだと実感しました。
 今までの創作授業は「リコーダーでメロディを作ってみる」「手拍子でリズムを作ってみる」という活動をしましたが、いずれも即興的であり「行き当たりばったり」感が強いものでしたが、VOCALOIDでは、試行錯誤しながらメロディを作り、それが作品として残ること。またグループで協力し合いながら1曲を完成することができたことも、とても良かったと思います。
 来年度は、ぜひ1年生・2年生の授業へも展開し、学年ごとに段階的な創作授業への取り組みができればと思います。