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静岡県浜松市立都田中学校

「クラシックギター×デジタル教材」で授業の充実と効率化を両立

2015/05/14

中学校器楽
  • ギター


 デジタル教材を活用し、きめ細やかで生徒のやる気を喚起するギター演奏指導を――。ヤマハがご提案した、新しい音楽授業の形です。
 都田中学校(浜松市)では、学校備品のギターを使い、リコーダーとのアンサンブル授業に取り組んでいましたが、音楽科教師の金原幸子先生はギターの専門的な演奏者ではないため、指導に苦労されていました。また、「生徒たちにとってギターは魅力的な存在。多くの生徒が初めて手にすることもあり、彼らが興味を持って授業に臨むからこそ、的確な指導を行いたい。それにはギターを魅力的に演奏することができ、また指導のノウハウを持った『ゲストの先生』を呼ぶことも必要だ」と考えておられました。年間で35時間しかない音楽授業の中、ギター指導に当てられる時間も限られています。金原先生は、その限られた時間の中で効率的に充実した授業をしたい、とヤマハにご相談くださり、それをきっかけに今回のプロジェクトが始まりました。
 金原先生のお話をじっくりとお聞きし、ヤマハはオリジナルのデジタル教材を用いた授業を提案させていただきました。指導における課題をとらえながら、音楽教育に力を入れてきたヤマハならではのノウハウを生かし、限られた時間の中で最大限の効果をもたらす授業プログラムを作成。トライアルとして、2014年に2年生(3クラス、1クラス約30名)を対象に、5時間の枠の中で取り入れていただくことになりました。そして実際に、ギターの基本的演奏法をわかりやすく指導するデジタル教材を使い、タブレット端末や大型モニターを活用した授業を行っていただきました。
 プログラムしたのは、生演奏の鑑賞から始まり、ギターの構造と基本的な演奏法の学習、そしてデジタル教材を用いた課題曲の練習を経て、最後はギターとリコーダーによるアンサンブルの発表会をという流れ。専門的な知識が必要な指導部分をデジタル教材が担い、教師にとって効率的な授業展開を目指しました。


 

1.“本物のギター演奏”を初めて体験

 

授業風景1

 通常、新しい授業を始める時は、CDやDVDを使った音楽鑑賞や、楽器や音楽についての説明から入ります。しかし今回は「本物の音」「本物の音楽」を体験してもらうことからスタートしました。ゲスト講師として招いた、「ヤマハ大人の音楽レッスン」でギター講師を務める山口直晃氏が、クラシックギターだけでなく、フォークギター、エレキギター、ウクレレと様々な楽器を演奏し、また、それぞれの特徴、音色や奏法の違いを説明。さらに、ギターの構え方、ピックの持ち方、コードの押さえ方など、ギター演奏の基礎的な知識にも触れました。
 授業後に生徒に行ったアンケートでは「いろいろな演奏を聴けたので興味が深まった」「演奏をもっと聴きたくなった」など、関心の高まりを表す声が多く寄せられています。

 


 

2.生徒との距離を縮めてくれるデジタル教材

 

授業風景2
 今回、課題曲としたのは『情熱の花』。金原先生と相談の上、1学期にリコーダーで練習したので生徒たちにとっても馴染み深く、コードも4種(Am、E7、C、G)と少ないことから選びました。
 この課題曲を使い、ヤマハはオリジナルのデジタル教材を開発しました。「ギターの構え方」、「コードの押さえ方」、「コードチェンジ」、「右手のストローク」などを、ステップに分けて練習できる教材です。これを教壇の上に設置された大型モニターや、生徒の手元に用意されたタブレット端末の画面に映し出しながら、金原先生に授業を行っていただきました。
 ほとんどの生徒はギターを手にするのが初めてで、当初は戸惑う姿も多く見受けられました。しかし、弾き方の基礎部分をデジタル教材に任せることで、教師が生徒たちの間を回りながらの指導に集中できるので、教師と生徒たちの距離が近くなり、教室はリラックスしたムードに。教師の目がひとりひとりに届くため、個々の生徒の理解度や習熟度に合わせたきめ細かい指導が可能となりました。

 


 

3.達成感や協調性を育む最終ステップ

 4時間目のグループ練習では、生徒たちもデジタル教材にすっかり慣れて自分たちのペースで練習を行えるようになり、さらに、自分のことばかりでなく、お互いに教えあう姿も見られるようになりました。
 そして迎えた最終の5時間目は、ギターとリコーダーによるアンサンブルの発表会。山口講師も再度来校し、アドバイザーとして参加しました。生徒たちが次々に演奏を披露していく様子をご覧になった金原先生は、「たったの5時間でここまで弾けるようになるとは」とおっしゃっていました。デジタル教材を取り入れた授業に、確かな手ごたえを感じられたようです。
 今回の授業を体験した2年生は、これまでグループ学習や話し合い学習といった授業が少なかったそうです。金原先生も生徒間の交流について気にかけておられたようですが、デジタル教材を用いた授業を行うことで「生徒がみんなで協力して成し遂げることによる楽しさや、充実感を味わうことができる」という確信をもたれたとのこと。
 1年後には、3年生になった彼らに違う曲でチャレンジしていただく予定です。また次期2年生や、他校の生徒にもこのプログラムを体験していただき、教材の改良を行っていくとともに、効率的で魅力的な授業のあり方を追求していきます。

担当の金原先生の声

都田中学校 金原先生
 ステップに分けられ、それぞれによく作り込まれているデジタル教材は、生徒たちもすぐに使いこなすことができ、楽しく練習できるものでした。そのおかげで、私は今までよりも細かく生徒たちの間を回って、個別の指導に専念することができました。何に困っているのか、何を楽しいと感じているのかという生徒たちの動向や反応を、リアルタイムで把握できる環境を得られたのは、私にとっても大きな収穫でした。
 生徒たちも、今回のデジタル教材を活用した授業を経験してから、明らかに変わったと思います。自分たちで成し遂げたという達成感を持ったことで、積極的に楽しんで授業に取り組むようになりました。また「次は何の曲をやるんですか?」と聞いてくることもあり、生徒たちの授業への関心も高くなっていることを実感しています。
 様々な楽器や音楽があり、それらがどれほど魅力的なものであるか、年間35時間という限られた授業の中だからこそ効率よく紹介し体験させてあげたい。デジタル教材を使った今回のようなプログラムは、それを実現させるための大きな助けになると確信しています。

生徒さんの声

授業を終えて、生徒さんからいただいた感想の一部をご紹介いたします。

◎はじめてでしたがなんとなくは弾けたのでとてもうれしかったです。タブレットを使った練習は分かりやすく楽しかったです。(女子)

◎ギターがどんどん上達していく感覚があってとても楽しかったです。もっと色々な楽器や音楽に触れたりして、自分のできることを増やしていきたいです。(男子)

◎とても楽しくて、ギターのことがよく分かったし理解しやすかったです。タブレットを使った授業も分かりやすくてよかったです。1つ1つを丁寧だったので、初めてでもできた。(女子)

◎この学習によって、コードとはどのような仕組みでできているのか、どのように演奏したらいいのかということを学べた。演奏は主音と感情を付けるものがあるため、これを意識したいと思った。(男子)

◎ギターは意外とすごく難しかった。けれど、練習を重ねていく間に、どんどんレベルが上がっていき、発表した時は達成感をあじわうことができた。すごく楽しかった。(女子)

 


 

生徒さんへのアンケート(一部抜粋)

 

ギターの授業は楽しかったですか?(回答者数:89人)

アンケート集計グラフ
67人 とても楽しかった
19人 まあまあ楽しかった
2人 あまり楽しくなかった
1人 全く楽しくなかった

 

動画と合わせてギターを演奏する練習方法はいかがでしたか?
(回答者数:89人、複数回答有)

60.7% 練習しやすかった
41.6% 伴奏に合わせるので楽しく弾けた
41.6% 自分ができないところがよく分かった
19.1% もっと何回も繰り返し練習がしたかった
16.9% テンポが速くてついていけなかった
5.6% 動画がよく見えなかった
4.5% その他

 

音楽の授業でタブレット端末を使ってやってみたいことはありますか?
(回答者数:89人、複数回答有)

40.4% 自分の演奏を動画で撮影してチェックする
38.2% 音楽鑑賞の動画を見る
37.1% インターネットを使って調べ物をする
36.0% 合唱でクラスの演奏を動画で撮影して、良い点・悪い点を話し合う
36.0% 合唱のパート練習で音源を鳴らしながら使用する
31.5% 楽譜が読めるようになるゲームをする
27.0% 楽器の個人練習に使用する
21.3% 音楽創作に使用する
2.2% その他