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静岡県浜松市立井伊谷小学校

私たちも自分たちの手で“学年歌”をつくってみたい!

2017/05/1

創作小学校
  • オリジナルソングづくり
  • 学級歌・学年歌づくり


 「私たちも自分たちの手で“学年歌”をつくってみたい!」。2016年秋、浜松市立三ケ日西小学校の6年生が、ボーカロイド教育版を利用して学級歌を作ったという読売KODOMO新聞に掲載された記事を見た浜松市立井伊谷小学校に通う一人の女子児童の胸に小さな夢が芽生えました。彼女の強い想いは、担任の髙林圭吾教諭を動かし、周りの友達、隣りのクラスの児童や担任教諭をも巻き込んで、ついに、学年歌づくりに取り組むことに繋がりました。


 

 ひとりの女子児童の夢から始まった「学年歌づくりプロジェクト」。しかし実際にプロジェクトが動き出すまでには2か月という時間がかかったそうです。「子供たち主導で発信する活動は児童を成長させるチャンス」と髙林先生は子供たちの自主性を尊重して辛抱強く待ったと振り返ります。約10人の実行委員の児童は「歌づくりなんてできない」と反対するみんなを説得するために、歌づくりの手順を調べたり、手づくりの「学年歌だより」を発行して仲間の気持ちを盛り上げるなど、様々な行動を自分たちで起こしました。その熱意が実を結び、5年生全員一致の賛同を得るに至ったところで、ヤマハにサポートのご依頼をいただいたのです。

 

 井伊谷小からの要請を受けたヤマハは、これまでにも多数の学校での活動をサポートしてきた塩谷(えんや)が担当となり、担任の先生方と相談のうえ、「ボーカロイド教育版」を利用した①歌づくりの基礎学習②歌詞づくり③メロディーづくり④ブラッシュアップ――という計4コマのカリキュラムを作成しました。
 今回の学年歌の曲の構成はAメロ・Bメロ・Cメロ・サビの4つをそれぞれ8小節と決め、4人が1グループとなってメロディーをつくります。メロディーづくりではボーカロイドの画面をみんなで覗き込みながら「この音は下げた方がいいよ」「この言葉は音を伸ばしたらどうかな」など意見を出しあい協力する姿が見られました。みんな「自分たちの学年歌をつくるんだ」という意思が強かったように思います。

 

 その後、児童がグループごとに制作した歌を、塩谷と制作スタッフがつなげて編曲。3月1日に完成曲を披露すると、子供たちからは大きな拍手と歓声が上がりました。

 

 子供たちの挑戦が始まってから4ヶ月あまり、ひとつの夢は『井伊谷小学校5年生学年歌』として結実し、今年3月17日に行われた修了式を迎えました。事前に児童から「一年間お世話になった先生方に学年歌をサプライズプレゼントしたい」と相談された塩谷は、ピアノ伴奏を担当することに。こうして、髙林先生とB組の生熊祥子先生を修了式後の音楽室に呼び出した5年生全員は、塩谷のピアノ伴奏に合わせ、井伊谷小の5年生学年歌を先生にプレゼントしたのです。子供たちは肩を組んで輪を作り、その輪の中に髙林先生と生熊先生を招き入れ、想いを込めて歌いました。創作に費やした時間を思いだし、思わず泣き出す女子児童。最初は笑顔だった髙林先生も、下を向いてあふれる涙を隠そうとしていました。実は児童には伝えていなかったものの、お二人の先生は3月いっぱいで他校へ異動することが決まっていて、これが担任として子供たちと過ごす最後の時間だったのです。

 

 「子供たちが自分の想いを曲にして、感謝の気持ちを込めて歌い、いつしか巣立っていく。こうした取り組みが、いつかは多くの小学校で普通の光景になると素敵ですよね」と塩谷。そんな彼女にも、実行委員の児童たちから、感謝の色紙が手渡されました。
 言い出しっぺの女子児童は、来年の卒業式で学年歌を歌い、卒業アルバムにも学年歌のCDを付けたいという夢に向かって新たなチャレンジを始めています。小さな夢から始まった、更に大きな夢への第一歩。たくさんの子供たちや先生方が、音楽を通して、よりワクワクする時間が少しでも増えていくよう、ヤマハも取り組みを拡げていきます。

 

担任の生熊先生・髙林先生の声

 

 最初に新聞記事を見つけた女子児童が「学年歌をつくりたい」と言ってきたとき、子供たちを成長させるチャンスだと思いました。子どもたちが自主的に発信する活動には、企画する力や交渉するコミュニケーション力、仲間の意見を受け入れて協力する力の育成など、社会に出た時に通じるものがいっぱい詰まっているからです。いろいろな壁にぶつかりながらも、それでも「やりたい」という熱意が学年歌に結実したのだと思います。
 完成した学年歌を練習するためにクラスでくり返し流していたのですが、止まると誰かしらが再生を押して子供たちが勝手にずっと歌っているのです。保護者のお便りにも「家でも学年歌を歌っています」という声が多く寄せられました。それだけ子供たちはこの歌が好きなんだと感じました。
 ボーカロイド教育版を使っての歌づくりは、音楽が苦手な子でも参加することができます。全員で歌詞だけでなくメロディーもつくりあげた歌だからこそ「自分たちの歌」という意識が強まったのだと思います。
 この歌をこれからも大切に歌い続けていってほしいと願っています。

 

子供たちの声(授業の感想)

・私たちだけの歌を作れるなんてすごい楽しくワクワクがいっぱいの授業でした。
・曲作りをするってきいた時はどうゆうふうに作るのか分からなかったけど、みんなと協力して「ここはこうしたら」など声を掛け合いながらできて良かったし、なにより歌が完成したという事が一番うれしいです。
・みんなで楽しく、世界で1つだけの歌が作れてうれしかったです。
・5年生だけが知っている歌という事がすごいと思いました。
・学年歌は6年生になってもこの64人で歌いつなげていきたいです。
 

先生と児童が一緒に歌う感動のシーン