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静岡大学教育学部附属浜松中学校

「箏×デジタル教材」で授業の充実と効率化を両立

2017/01/13

中学校器楽

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 静岡大学教育学部附属浜松中学校は箏が40面もある恵まれた環境にあります。音楽科の山下先生は、箏の授業を通して日本を感じる音や音楽の特徴をとらえ、日本人の伝統的な美に対する捉え方や芸道に対する考え方にも着目させたいと、箏の授業の実施を検討されていました。
 山下先生は、昨年までの赴任校にてギターの授業でデジタル音楽教材を活用されたご経験があります。デジタル音楽教材を活用することで、効率良く授業を進めることができたこと、また生徒達自身が積極的に学習に取り組むことができたなどの成功体験から、箏のデジタル音楽教材も熱望されていました。
 静岡大学教育学部附属浜松中学校では、2人で1台のタブレット端末で箏のデジタル音楽教材を使用し、箏の授業を実施しました。


 

1.箏のデジタル音楽教材について

 

 「画像だけでなく、動画による丁寧な解説があるのがとても良い。教科書にも解説や図の掲載はあるが、平面的なものよりも、動画で視覚的、聴覚的に学習した方がより深く正確に学習できるし、分かりやすい。」と話す山下先生。生徒にとって注意すべき点が「良い例」「悪い例」として示されており、比較することで練習課題が明確になり効率良く授業が進められたようです。
 デジタル音楽教材は、大型モニターに映し出して一斉授業に使用したり、ペア学習では手元にタブレット端末を置いて個人の進度に合わせて使用したりと、大いに活用していただきました。
 また、「押し手」「流し爪」などの奏法を細かく取り上げている点も好評で、解説が丁寧で分かりやすく鑑賞する力にも結びつくと評価されています。
 特に「向こう指」には大変驚かれたようです。「向こう指」というのは、「人差し指・中指・薬指」を指しますが、この「向こう指」をしっかり安定させることで、親指で弾く音がしっかりした音色になります。従来の授業では「向こう指」を意識したことがなかったそうですが、デジタル音楽教材で「向こう指」の重要性を知り、デジタル音楽教材で指導しているとおりに実践したところ、生徒たちの箏の音色が格段に良くなったとのこと。
 従来の授業では、名称・基本事項を覚えても実際の演奏に生かすことができなかったようですが、奏法を正しくマスターし、箏本来の音色や響きを体験することで、目的としていた「日本を感じる音」や「日本人の美に対する捉え方」にまで着目できたように思います。

 


 

2.唱歌について

 

 山下先生は、今回初めて「唱歌」を使って授業を行いました。
 「楽譜が無かった時代、「唱歌」を唱えて曲を覚えたことや、「唱歌」によって伝承されてきたなどの歴史的な背景、また、「唱歌」には箏の音色、音のまとまり、奏法、間の取り方など多くの要素を含んでいることを踏まえ学習に生かすことで、生徒達は箏の響きにまで集中し、音色にこだわりを持って演奏することができた。」と授業を振り返っていらっしゃいました。
 また、その演奏表現と鑑賞をうまく組み合わせることで、生徒達が自分自身の足りない部分を見つけ、その課題を解決するという活動にも大変良い効果があったようです。


 

3.ゲストティーチャー

 

講師

 研究授業ではゲストティーチャーとして静岡大学の長谷川慎先生をお招きし、日本の芸道のお作法でもある「礼」から授業がスタートしました。
 ゲストティーチャーの演奏に、前のめりの姿勢で聴き入っていた生徒達。自分自身の演奏と比較して、「音色」や「間の取り方」の違いなどに生徒自身が気付けたこと、また、それを課題として解決しようとする姿が素晴らしいと長谷川先生は評価されていました。
 「プロの演奏家に来ていただき生演奏を聴かせていただけるのは非常に良い。芸事のお稽古の雰囲気を味わうことは、伝統音楽を学ぶ上でも、生徒達の体験を増やす意味でも価値のあること。」と話す山下先生。事前に箏の学習をしているからこそ感じ取れるものも多かったと思います。

 


 

4.最後に

 

 デジタル音楽教材を活用することで、限られた少ない時間の中で効率良く学習することができたようです。「映像や音声などを利用し、タッチパネルを動かしながら拡大して確認したり、調べ学習・グループ学習での話し合いに活用したりするなど、従来の授業より多角的に学習ができ、多様性もあるのが大きな利点」と話す山下先生。何よりも生徒自身が興味を持って取り組めたことが大きかったように思います。
 そして、演奏できるようになることで「嬉しい」「楽しい」と思うことも大切。そのような経験を通して、我が国の伝統文化の理解に繋がるようにも思います。
 箏は、和楽器の中でも音が出しやすい楽器です。多くの生徒達が箏に興味を持っていますし、「さくらさくら」は旋律の音が隣り合う弦を順に弾いて無理なく弾けるようになっており弾きやすい楽曲でもあります。
 「箏の経験がないからという理由で、授業で扱うことを躊躇されている先生も多くいらっしゃると思いますが、デジタル音楽教材を使うと教えやすく、生徒達も予想以上に弾けるようになるので、ぜひチャレンジしていただきたい」と、音楽科での箏の授業の取り組みを強く勧めていらっしゃいました。