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活動・事例紹介 Activities & Showcase

― 「歌唱自動分析評価システム」を使って民謡に挑戦! ―静岡大学教育学部附属静岡小学校でのトライアル事例

main学習指導要領で我が国の伝統音楽への取り組みが掲げられていることについて、静岡大学の志民教授に教育現場の現状や、ICTを活用した授業についてお話を伺いました。
志民教授が教鞭を執られている教育学部音楽教育講座では、附属学校を中心に長唄や民謡、能楽の連携授業を実施されています。
ヤマハからご紹介した技術の中で「歌唱自動分析評価システム」が、民謡の授業において有効ではないかとのご意見をいただきました。民謡の歌唱の中で特に特徴的な「コブシ」の習得には、まず範唱の中で「コブシ」に気付き、認識することが重要。しかしながら「コブシ」を体感するのは大変難しいのが現状です。このシステムが「コブシ」の習得の手助けになるかもしれないというイメージを持たれたようです。
そこで、静岡大学教育学部附属静岡小学校の小野先生のご協力の下、6年生の音楽、民謡の取り組みの中で「歌唱自動分析評価システム」を活用していただくことになりました。


 

1.静岡の民謡「安倍川粘土つき唄」について知ろう

 

民謡は、庶民の生活の中で自然に生まれ、唄い継がれてきました。「安倍川粘土つき唄」は、大正3年の安倍川大洪水に苦しめられた人々が、田畑を守り、安らかな暮らしへの悲願を込めた築堤の作業唄です。当時の洪水写真や新聞記事などを見ながら児童たちは想像を膨らませ、この民謡が生まれた背景について学習しました。
そして、歌詞に登場する言葉に注意しながら「安倍川粘土つき唄」の範唱を聴きます。「お茶、たちばな、静岡、粘土つき・・・」児童たちは気付いた言葉を次々に挙げていきます。静岡ならではの言葉も多く聞き取れているようでした。
5年生時に学習した「ソーラン節」の効果もあり、民謡独特の声の出し方や、コブシ、囃し言葉などにも意識を持って聴くことができました。

 


 

2.粘土つき唄の仕事との関わりを感じ取ろう

 

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「安倍川粘土つき唄」が生まれた当時、男達は鉢巻、股引、わらじ履き、女達は縞の野良着、手甲、たすき掛け姿で粘土棒を振りかざし堤防をつき固める、実に単調で苦しい作業に励みました。このような当時の作業風景を再現した映像や写真を見たり、粘土つき棒を実際に触ったりしながら、仕事唄のイメージを膨らませました。
実際に男性の「音頭出し」と女性の「囃し言葉」の役割分担をして、堤防を固める動作を入れながら唄ってみることで、より「安倍川粘土つき唄」の理解を深めているようでした。

 


 

3.「歌唱自動分析評価システム」を使ってコブシの練習をしよう

 

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この「歌唱自動分析評価システム」は、歌唱を自動で分析し、音程、タイミング(リズム)だけでなくコブシ、ビブラート、しゃくりなどもiPadの画面上に視覚的に表示し、客観的に評価することができるシステムです。今回は特に「コブシ」の表示に注目し、授業で活用していただきました。
児童たちは4人グループでiPadを1台ずつ使い、一人ずつ順番に唄います。可視化された声をグループ内で見合ったり、分析された歌唱を再生して聴き合ったりし、気付いたことを話し合っていました。
「コブシ」のコツについても共有し、何度も繰り返し「歌唱自動分析評価システム」に向かって唄いながら、「コブシ」に挑戦していました。

 


 

4.生伴奏に合わせて唄おう

 

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民謡を学び始めた4年生と合同授業を行いました。6年生は学習した成果として写真や粘土つき棒を見せながら、この民謡が生まれた背景などを発表したり、何度も繰り返し練習した民謡独特の声の出し方やコツ、コブシや囃し言葉などについて分かりやすく伝えていました。
そして、志民教授をはじめ大学生たちによる和楽器の生演奏に合わせて全員で唄いました。
その後、大学生たちによる「ちゃっきり節」「こきりこ節」など他の民謡の生演奏を鑑賞。びんざさら、棒ささら、こきりこ、三味線、締太鼓、平太鼓、篠笛、尺八など、初めて見る和楽器の演奏を体験することができ、この民謡の授業を通して日本の伝統音楽について益々興味を持ったようでした。

 

担当の志民教授、静岡大学大学生 泉玲佳さんの声

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<志民教授>

児童たちは、タブレット端末を使うことに関心があります。また「歌唱自動分析評価システム」は自分自身の声を可視化し、「これがコブシか!」と知覚することに大変有効だったと思います。このシステムを使うことで、すぐに「コブシ」をつけて上手に唄えるようになるわけではないが、まず「コブシ」を認識できることは大きな効果でした。聴き比べだけでなく視覚的に認識できる方がはるかに良いですし、試行錯誤しながら夢中になって何度も練習することは上達にも繋がります。何より児童たちが楽しく主体的に取り組めていたことが、大変良かったと思います。

<泉玲佳さん>

児童たちがとても上手に唄えるようになっていてとても驚きました。民謡に対して身構えることなく、普通に口ずさむように唄っていたので、思わず踊りも披露しましたが、合わせて唄ってくれるので嬉しかったです。
児童たちが「歌唱自動分析評価システム」を使って練習したデータを研究材料とし、教育音楽での民謡の取り組みについて活かしたいと思います。

担当の小野先生の声

民謡は代々唄い継がれていくものです。地元の財産でもある民謡を、児童たちが伝い手として次の世代へ伝えていって欲しいという想いがありました。そのためには自分たちで唄うという経験が必要だと思います。
この児童たちは昨年「ソーラン節」を学習したのですが、範唱を聴くだけでなく、声を可視化したスペクトログラムプロというアプリを使って声の響きを確認することを実践しました。
今年の「安倍川粘土つき唄」では、スペクトログラムプロに加え、「歌唱自動分析評価システム」を使い、コブシが入る箇所や音程が目で見れることが、民謡の歌唱には大変有効でした。自分の声を録音し客観的に評価・確認することができること、変声期を迎えている6年生の男子児童にとってはキーを変えられる機能が、児童たちの関心を維持し楽しく練習できた要因だと思います。また、イヤホンマイクを使うことにより、唄うことに集中でき、気持ちよく唄えたようです。
民謡の最後の授業では、下級生に「安倍川粘土つき唄」を伝承することもできました。こうやって、次の世代へ繋げていけると嬉しいです。